TLM200R

林道を走りたくなってTLM200Rを購入しました。バイクに乗るのは20数年振りです。トライアル車ならオフロード車でも入っていけない所まで行けるのでは?と腕の事はさておき、この車種にしました。’85〜’86年式で37〜38年前のバイクにもかかわらず、検索すると20〜30万円くらいの金額で程度の良い物は当時の新車価格くらいで売られています。なぜそんな値段なのか理解に苦しみますが旧車は全般に高く、公道を走れる国産トライアル車が現在市販されていない事も関係しているのかも知れません。このTLMはオークションで「エンジンがかかり問題なく走行できている。フロントフォークオイル漏れあり」との説明で出品されていた車両で、走行距離はわずかに1078km、フロントフォークのオイル漏れは程度次第で交換すれば良いし、タイヤも新品で車種と年式の割には目立つ傷も無く、比較的綺麗な車体だなと思ったので落札しました。陸運局で登録手続きをしてナンバーをもらい、いざ試走して見ると・・・確かに走れる事は走れますが、低・高回転域はまぁ良いとして中回転域がダメです。そしてフロントフォークのオイル漏れは音まで伴ってオイルが出て来る始末。これは少々楽しめそうです♪
2023/11/3
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往復470km程走って隣県まで受け取りに行ったのですが、出品者はどうやらバイク屋さんらしき人でした。その時の話では前オーナーは長い間屋内保管していたと言う話しで、それを引き取って出品したようです。長期保管の影響でタイヤを始めとするゴム、プラスチック類の劣化でオイルシールがダメになってフロントフォークからオイル漏れを起こしたものと思われます。その他にチェーンスライダーが無く、チェーンテンショナーのスリッパも硬化してボロボロでした。上の画像はほぼ整備が完了した状態で綺麗ですが、ガソリンでなければ落ちない程の汚れが全体に薄く付着しており、画像側とスタンド側でも汚れとサビの発生具合が違い、どれ程の長い期間放置しておけばこのようになるのだろうという感じでした。
オイルシール、フォークオイル、ミッションオイル、チェーンスライダー、スリッパその他必要な部品を注文して届くまでの間にキャブレターを調整しました。中回転域が濃過ぎます。現状の各ジェット類はノーマルのままですが、ジェットニードルのクリップ位置がノーマルより濃い目の上から4段目。パイロットジェット、チョーク系統の詰まり。この辺が原因かな?と思い何度も調整を繰り返し、最終的にMJ(メインジェット)ノーマル98番を92番に、ジェットニードルクリップ位置を一番薄い1段目にして、入って無かったエアークリーナーもウレタンを切り出して取付けたところ、ほぼ満足の行く結果になりました。3速までの中高回転域は多少不満が残りますが、4速以上は全域で気持ち良く吹き上って行きます。チェーンスライダーは純正品などある筈も無く社外品を取付け、スリッパは運良く純正品が手に入りました。フロントフォークもオイルシールとフォークオイルを交換し、エアを指定圧範囲上限の0.4kg/cm2で加圧したところ、見違えるほどショックの吸収性が向上しました。
ある程度の整備を終えたところで早速林道を走って見たのですが、モトクロスをやっていた時のクセが抜けず、アクセル全開で「こんな走り方をするバイクでは無い!」と思いつつも、それはそれは気持ち良く走り回って来ました(笑)

画像は標高300m程度まで林道を走り、そこから先は登山道?みたいな所を標高520m程の頂上まで登って来た時のもので、TLMを止めてある場所は倒木(ハンドル高)と藪で先へ進めず、迂回ルートを探しています。こういう所はやはりトライアル車は強いです。
その数日後、別の林道を走りに行ったら砂防ダムの工事中でコンクリートミキサー車が停車していて、何とか脇を通り抜けられそうだったので、半クラッチでそろそろと走り、前に出た所で突然クラッチが切れっぱなしの繋がらない状態になってしまいました。幸い登っている途中だったので惰性で下まで下りてから何とかならないか?と思い、クラッチ回りのボルトを調整したところ何とか走れるようになり、かろうじて帰宅できました。長期に渡り放置されていたバイクはクラッチが固着する可能性があるらしく、仮に数枚あるクラッチ板の一枚だけがフリーになっていて、これまで走れていたがそれが繋がらなくなった?などと考えながらバラしてみるとクラッチ板を始めとするクラッチアーム、スプリング、アウタ、プレッシャープレートなど、どこにも異常が無くクラッチ板に至っては厚さを計測したところ、標準2.9〜3mmとなっているのがほぼ3mmありました。メーターの走行距離1078kmは当初、交換してあるのかなと思いましたが実走行距離と思われます。異常が無いのでそのまま組付け、外したついでにクラッチワイヤーに給油しようとしたら何と15mm程度しか動きません。原因はこれです。固着寸前だったようで、恐らくほとんど使わない半クラッチ操作で固着部分でワイヤーが動かなくなってしまったのでしょう。 ・・・参りました。 ワイヤーは給油で動くようになりましたがその後、中古ですが別の固着していないワイヤーへ交換しました。それにしても先日の山頂付近でなくて良かったです。
林道を走るとなると工具、スペア部品、水などの荷物が増えるため、リュックは好きでは無いので鉄の丸棒でキャリアを作りました。最初はキャリア本体とステーを一体型で作ったんですが、取付け取外しが面倒になるので切り離して別にしました。ステーをフレーム下部へボルト止めしてからキャリア本体をステーに固定します。15L程度のシートバックを基準にした大きさにしていますが、30〜40Lのリアボックスも乗せられるくらい強度を出しています。
サイレンサーはエトスのアルミサイレンサーが付いていました。排気圧可変型です。乾いた歯切れの良い音がします♪
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イグニッションコイルとCDI
どうも劣化しているようです。どちらもマニュアルにある抵抗値が出てきません。オンロードと違い林道を走っている時に人里離れた山中で故障などしたら大変です。イグニッションコイルはまだしもCDIを疑うきっかけになったのはスパークプラグの火花が線香花火並みに弱いのと、整備情報をネットで探している時にTLM200RのCDIのコンデンサー交換の画像を見てからです。このCDIには電界コンデンサーが使われています。37〜38年前の電界コンなど劣化が著しい事でしょう。私もCDIをバラして、せめてコンデンサーだけでも交換しようとしましたが、充填されている保護剤を溶かす薬品などあるはずも無く、途中で諦めました。このまま使うのも不安だし、現在市販されているもので適合する物は無いかディトナにも問い合わせましたが「ありません」と一刀両断されました(爆) 残るはアマゾンで出ていた中華製のCDIが使えそうなんですが、信頼性に不安があるものの使って見る事にしました。最悪、同じ物を予備として持ち歩く覚悟で使って見ます。
これがそうです。GY6型 1804円!ラベルが曲がっていますが・・・
先生!純正ハーツって何ですかぁ?
しかも純の字がおかしいし・・・使う前から不安出まくりですがな・・・
付いていたカプラーを切り離し、電線を延長してTLMに合わせたカプラー類を取付けました。
元の取付場所の幅が狭くて取付けできないので、うまく収まる所は無いか探したら手頃な場所がありました。タンク取付ボルトの下、リアサスの上部取付部とフレームの隙間です。この部分はリアサスはほとんど動きませんし、接触部には厚いウレタンを貼って振動からCDIを保護します。固定はCDIのヒートシンクに4箇所穴加工してインシュロックでリアサスへ少し押し付ける方向に固定すればフレームへの接触もありません。イグニッションコイルも交換してプラグの火花を確認したところ、明かに強くなっています。

始動
キック一発目からすごいケッチンが来ました。3回で始動しましたが何か変・・・回転が重い感じでアクセルの反応も鈍く、後付けのデジタルタコメーターを見ると4000rpmくらいまでしか回りません。所詮こんなモノか・・・ と諦めかけた時、ふとパルスジェネレータへの配線色を車体配線色とCDI配線色を合わせたけど、逆相ではないだろうか?と思い線を入れ替えて見たところ大正解!正常に回り始めました♪ 排気音もノーマル時と比べ少し軽く、パン・パン・パン!と切れも一段と良い感じです。

試運転

中速域・4000rpmくらいまではノーマル時とさほど変わりませんが、そこから上はパワーバンドに入るとパーン!と一気に吹き上がり、一瞬ですがハンドルが引っ張られるくらい力強くなりました。火花の強さからもノーマルCDIが弱っていたのは間違いありませんが、中華CDIも侮れませんね(笑) これで耐久性があれば文句無しです。
   ここまでに行った整備 10/4〜11/3
@キャブレター分解整備・調整
Aチェーンスライダー取付 チェーンテンショナースリッパ交換
Bエアークリーナー製作取付
Cミッションオイル交換
Dフロントフォークオイルシール フォークオイル交換
Eキャリア製作
Fドライブチェーン洗浄給油
Gリアブレーキペダル取付角度、ストップスイッチ調整
Hフロントブレーキスイッチ取付(付いて無かった)
Iタコメーター取付
Jクラッチ板分解点検 クラッチワイヤー固着修理・交換
Kライセンスランプ不点修理
LテールライトSW接触不良修理
Mカウル下部固定部 レジン修正補修(固定部突起が片側破損して無し もう一つも割れ落ちる寸前)
NCDI イグニッションコイル交換

当初はここまで手の掛かる車両とは思ってもいませんでした。これ以上何も無い事を祈ります(爆)

リードバルブ キャブレター点検
油面を点検していなかったので改めて計測したところ、標準19mmが16mmになっていました。3mm高くなっています。1〜3速までの中・高回転域で微妙に濃かった原因はこれです。メインジェットを#92から#95へ上げ、ジェットニードルクリップ位置も1段からノーマルの2段へ戻し、外されて付いていなかったジェットホルダー(画像左下の白いパーツ)も取り付けて試運転したところ、1〜3速でのアクセルの反応が見違えるほど向上しました。ラフな操作をするとハンドルが引っ張られるくらい力強く、そして下から上まで綺麗に吹き上がります。1〜3速までがぐっとパワフルになった事で今後の林道が楽しみになりました。
タンク内は防錆加工されていますが、念のためガソリンフィルターを取付けました。とにかく狭くぎゅうぎゅう詰め構造のため、普通のストレートタイプのフィルターは取付けできません。L型の形状のフィルターです。
1〜3速での吹き上がりが今一つ気掛りだったので各部を点検してみました。リードバルブも疑って見ましたが、ヘタリも破損も無く綺麗です。
インテークマニホールドからピストンスカート部の吸気口が見えます。このTLMの発売時期と同時代に私が乗っていた同社のモトクロッサーとは全然違う構造です。
2024/2/13
プラグの状況
左が昨年の大まかな調整が終わってから最近までの状態で碍子部、マイナス電極共に濃い茶色なので高回転域でやや濃く、ねじ部先端周囲に小さなカーボンの付着が多数見られる事から低・中回転域が濃いと思われる状態です。
右が今回の調整後、一般道・林道を50km程走った後のプラグの状況です。光の加減でわかり難いかも知れませんが、碍子部、マイナス電極は茶色掛った灰色、ねじ先端部周囲のカーボン付着は無くなった事から高回転域はやや薄くなり、低・中回転域は良好な状況と思われます。メインジェット#98以上、ジェットニードル上から2〜3段くらいが良いかも知れません。あるいはプラグ熱価が低いかも知れませんので1番上げて様子を見ます。
メインジェット:#92 パイロットジェット:#45
ジェットニードル:上から1段 油面16mm
2024/2/28
メインジェット:#95 パイロットジェット:#45
ジェットニードル:上から2段 油面19mm
TLM200R‐F キャブレター形式PE24 刻印PE63A標準
メインジェット:#98 パイロットジェット:#45
ジェットニードル:上から2段 油面19mm
上で記述しましたが購入してきた時はジェットニードルは上から4段、油面標準+3mm、これでは全回転域で濃かったはずです。まさか油面まで変更してるとは思いませんでした。しかもプラグはEタイプなのにHタイプが取り付けられていたので、若干ですが圧縮が下がっていたでしょうし、プラグへのカーボン堆積もありました。想像ですが、サイレンサーを抜けの良いエトスへ交換したのでキャブをいじったら濃くなり過ぎてしまったのでエアクリーナーを外した・・・のでしょうか? 購入時のキャブ調整前は1〜3速で中・高回転域が濃くて吹け切らず、4〜6速は過不足無しで吹け上がり、最高速95km/h。調整後は1〜3速の中・高回転域やや改善、4〜6速は良好、最高速110km/h。今回の調整では全域で良好なものの、最高速は100km/hへ落ちました。もう少し調整の余地がありそうです。
最終調整 プラグ:B7ES→B8ESへ交換したところ、焼け色が一段濃くなりました。
画像左:メインジェット#95 ジェットニードル上から3段    画像右:メインジェット#105 ジェットニードル上から2段
前から比べればプラグの焼け具合は良い感じでしょうか?メインジェットは#105まで試しましたが、#95がベストなようです。ノーマル#98でも少し濃い目です。画像右と左では吹け上がりに大きな差があったのですが、見た目での焼け具合の変化は以前と比べて少なくなりました。最終的にメインジェット#95 ジェットニードル上から2段〜3段が一番アクセルの反応と加速が良く、最高速も110km/hへ戻りました。
2024/4/4