SV−2 Ver.2003 製作記  試聴編

4/17  試 聴
26時間のヒーターエージングを終え、試聴開始です。やっとここまで来ました。以前読んだ845アンプの製作記事で印象に残っている「1000Vに迫るB電圧で無ければ出ない音と言う物があり、楽器の艶っぽさや表現力、スケール感と安定性では300Bを圧倒する」という記事を読んでからは、私にとって845は300Bよりも優先順位が上であり続けました。
試聴開始して約12時間たった現在、まだまだエージング不足であるにもかかわらず、正にその片鱗を窺わせる音質です。

音を出す前にいくつか気になる点がありました。まず、この大きなパワートランスを見た時に一抹の不安があったのですが、その不安が現実の物となりました。リーケージ・フラックスによる他のトランス類の発振です。これはすぐ近くに置いてあったライントランス、MCトランス共に少々の移動と角度を変る事により簡単に発振は納まりました。次にB電源のスイッチを入れた瞬間、ウーハーが前後に少々大きく揺れます。整流管とは違い、半導体による整流は電圧の立上りが早い為でしょうか・・・今までは大音量再生時でもそれ程揺れる事は無かったので、大丈夫とは思いながらも精神衛生上良く無いので、スイッチを入れる時だけスピーカー端子をショートさせる事にしました。今後、オフディレータイマー等でも取付けられれば自動でショート出来る回路でも組み込みたいと思います。
上記二点はメイカー製アンプでも多々ある事ですので特に問題となる事ではありません。
試聴開始
まあ、最初はこんなもんでしょう。中高域ガサガサ、低域そこそこ、全体に音が前に出ず。長年惚れ込んで使っていた6B4Gには遠く及びません。電線を交換しただけでも落ち着くまでに数週間はかかりますので、音出しの始めとしては当然の事でしょうね。しかし、30分もすると見る見る変化し始め、まず高域から落ち着き始めました。更に2時間、3時間と進む内にどんどん良い感じになって来ます。同じ曲を数十分後に聴いても明らかに違い、耳が変になったのかと思う程刻々と変化して行きます。

4/19 25時間経過
まだまだ1/5〜1/10程度のエージングですが、聴きやすくなって来ました。14時間程の経過時点ではボーカルはまあまあ、サックスはダメ・・・輪郭がはっきりせず、奥に引っ込んでる感じでしたが、反面弦は良く出て何度も同じ曲を聞き込んでしまう程でした。25時間経過時点では、弦は少々おとなしくなりサックスは大分良くなりましたが、まだ音が前に出よう出ようとしているのに、ブレーキが掛かっているとでも言ったような感じです。それにしても結構な発熱量です・・・ 電流を測定したらヒーターのみで1.4A、無負荷電流が3.2A/104Vなので消費電力は約337Wになります。6B4Gで99W、71Aで37Wなので製作者に似て結構な大メシ喰らいです。
        (○^ε^○)〜♪
4/23 50時間経過
トランスの絶縁ニスの匂いも大分少なくなってきました。ヒーターエージング中はドアを開けっ放しにして換気扇を回しても、頭が痛くなってくる程の匂いでしたが、現在はほとんど気になりません。在宅時はCDをリピートでかけっぱなしにしてエージングを進めてましたので、日数の割にはエージングが進んでいます。試聴初期から比べると音の出方がかなり変わってきています。硬さや荒い感じが大分和らぎ、音が前に出てくるようになりました。どんなジャンルでもそつ無くこなしますが、特にボーカルの生々しさ、弦の美しさが熟成されてきて、何とも言えない心地良さです。パワートランスが大きい為か大音量再生時でもしっかりと電力を供給している感じで歪む事が無く、抜群な追従性と再現性です。このアンプ本来の音が出てくるまではまだ時間がかかりそうですが、現時点でも十分満足の行く出来になりました。この後、エージングが完了した頃を見計らい、真鍮&ステンレスインシュレータと交換したり、211を挿して見てどのように音質が変化するか楽しみたいと思います。
5/1 ウッドシャーシ補強とインシュレータ取付
80時間以上経過して音の方は落ち着いてきたのですが、ウッドシャーシを点検した所、側板上部に少々狂い(反り)が見られました。27kgの重量に加え、アンプから発生した熱が木部に伝わり、狂いが出始めたのでしょう。2時間以上電源を入れておくと、側面は人肌以上の温度になってますので木にとってはかなり過酷な環境と考えられます。385mmの長さに対して上面が中央部で0.5mm程窪んでいます。これで狂いが止まるかどうか分かりませんので対策をします。この場合の狂いを押さえる方法として @温度、湿度の変化や風を当てない A木の繊維を切断する(ノコ目を入れる) 等の方法が考えられますが、@の方法は不可能ですし、Aの方法もこの構造上困難です。考えた末に裏側からドリルで穴を開け(ある程度繊維が切断されます)ステンレスパイプを入れて補強する事にしました。
19φ深さ320mmの穴を開け300mmに切ったステンレスパイプを叩き入れます。
入れる時は滑りを良くするのと隙間充填に木工用ボンドを塗ってから挿入します。 これで挿入完了。
コルクパットを同系色に着色した後貼り付けて完成。
インシュレータ加工&取付
オリジナルの底板は27kgの重量に耐え切れず歪んでいました。(^_^;) 音の方も落ち着いてきたので、真鍮&ステンレスインシュレータを取付けてどのように音質が変化するか確認して見たいと思います。

3mmのステンレスビスの頭部をネジカッターで切断してインシュレータに取付ます。
ウッドシャーシ底面に3mmのタップを立てます。

木にタップ?( ̄□ ̄;

と思われるかも知れませんが、ちゃんとネジ山が立ちます。それ程硬く重い木です。ちなみにこのカリン材は水に浮かびません。沈みます。ネジ山の補強に瞬間接着剤を流し込み、固まった事を確認してからもう一度タップでさらいます。
インシュレータをネジ込みます。


四隅に取付けて完成。底板は放熱効率を上げる為に取外しました。
                            試 聴
これはダメ!まず高域がきつく感じたので、数年掛かりで追い込んだネットワークを調整しては見たものの、そういうレベルではありませんでした。音が硬くなり、抜けが悪く、潤い感が感じられなくなってしまったのです。ボーカルを例に上げると、音像が一段後退し、口の中の湿り具合まで伝わって来そうな音だったのが、パサパサした乾いた感じになりました。サックスも同じ。シンバルは「シャーン」が「シャ・・・」で終わってしまいます。真鍮スパイク受けを外し、インシュレータのみでラックに置いて見たら、ある程度は改善されましたが、まだ潤い感が足りません。結局ゴム足に戻してしまいました。

これは大変意外な結果になりました。あれほど評判の良かった真鍮&ステンレスインシュレータが、なぜ私のだけこんな結果になってしまったのか? 考えられる理由としては
@オリジナル機等は鉄の底板にインシュレータを固定するのが前提となっている事
Aオリジナルよりは格段に剛性と重量がアップしているので振動係数が合わない
B無垢材ラックとの振動の相性
などが上げられます。@Aについては説明の通りですが、Bについては無垢の木材は振動しにくく、振動しても嫌な周波数の音は出しません。好結果を得られた方々はどんなラックに置いているのか分かりませんがこのあたりがうまく噛み合わないのではないかと考えました。

これは私の使用環境がたぶん特殊なのであって、このような結果は稀ではないかと思います。後日6B4G、71A、プリのいずれかに装着して見てもう一度、真鍮&ステンレスインシュレータの性能を探って見るつもりです。
5/2 プリアンプに取付
パワーアンプよりも入力系が集まるプリアンプの方が変化が表れ易いのではないかと考え、取付けて試聴して見ました。
これは・・・評価通り一聴して透明感、解像度が向上したのが分かります。SV-2への装着とは全く逆の結果になりました。この違いは何なんでしょう? やはり、27kgの重量+木部への取付けと10kg前後+鉄製底板への取付けあたりが関係しているのでしょうか?
この結果には驚くと共に、相性の良し悪し、セッティングの難しさ、微妙さには改めて考えさせられました。
                       注 記
ここに掲載した内容は、全く対照的な逆の結果が出た面白い二例として、あえて取り上げたもので真鍮&ステンレスインシュレータを批判するつもりは全く無く、むしろその素性の良さは装着前から理解していたつもりでした。プリアンプに装着、試聴して見た感想を述べれば、この低価格でこれ程の音質改善を見込める物は無いと思います。サンバレー様の名誉の為に付け加えさせて頂きます。
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