2018/5/18
パワーアンプ群は最終的にスピーカー側へ設置する予定でしたが、全てのアンプが揃わないとラックをどういう形状で造れば良いのか分からないので、これまで製作出来ませんでした。2A3が完成して部屋へ置いたところ、さすがに足元が窮屈に感じ出したのでパワーアンプ用のラックを造ります。最初は単純に1列4段で造ろうと考えていましたが、高さが出て圧迫感を感じそうなので、1段目を前に出して変則的な4段構成にしました。こうする事で金具で壁に固定しなくても、転倒防止にもなります。材料は製材所に桧をストックしてもらっていたのですが、改めて在庫を確認したところ「はっはっは♪忘れて全部出荷してしまったぁ♪ 代わりにこのケヤキ持ってけ」 私「・・・・・」 まぁ、ケヤキはとても良いのですが、桧と比べると重量が2〜3割増しになります。4段をこのサイズで造ると重量は40kgを超えると思われますし、加工も桧より手間が掛りますが、覚悟を決めてケヤキで造る事にしました。
棚板はコントロール部ラックと同じように曲線のえぐりを入れた形状にします。これは単に意匠から来たものではありません。以前のラックは全て四角四面の棚板でしたが、上段の棚板が被さり、下段に置いたコントロールアンプやCDプレーヤーの操作が少々やりづらい事が気になり、えぐれば見通しが良なると思って生まれた形状です。それなら下段の機器を少し前に出せば良いかと言うと、今度はリスニング位置での操作がやり難くなってしまいます。画像左が現在のチャンデバを置いた状態、画像中央が上段の棚板をストレートにした場合の状態でリスニング位置からの視点、操作のし易さが分かると思います。今回のラックはパワーアンプの電源を入れる程度なので、操作に関しては問題ありませんが、振動面ではこのコントロール部ラックは驚く程振動が少ないのですが、これはえぐりを入れた事で、棚板の共振周波数が一枚の各部でそれぞれ異なる為では無いかと考えています。
一昨年製作したこのコントロール部ラックは、鋳鉄製のインシュレーターに6mmのボルトを加工して固定し、ラックの高さを変更出来るようにしてあります。ラック本体にはこのボルトを介してしか床からの振動が伝わりません。今回の支柱には横着をしてインシュレーターを入れないつもりでしたが、ちょっと実験をして見ました。画像右は現在のラックの支柱の脇に、三種類の木材を立てて低音の強い音を出し、振動を比較して見たものです。ラック支柱では全く振動が感じられないのに、木材の方はその接地面積に比例して振動が大きく感じられます。荷重の違いかと思い、体重を掛けて見ましたが変化はありません。ボルト支持での「点接地」の効果を確認出来ました。ここは横着をせず、インシュレーターを入れます(笑)
購入してきたケヤキです。サイズは2300x260x52の板材が5枚、支柱用の1900x150x130が2本です。
板材は若干含水率が多いものの、何とか大丈夫そうですが、支柱用の角材は18%もあり、これでは使えないので、在庫の大盤から切り出しました。
余裕を見た寸法でカットします。板材は片面にだけカンナを掛け、狂いが出るかどうか試したところ、2枚に1日半で1mmの反りが出ました。
支柱を加工します。角材から八角にそぎ落とし旋盤で120φに削り出して行きます。
誰にも教わった事が無い私にとって旋盤加工は面白くもあり、難しい事でもあって、毎回加工する度に新たな発見があります。
支柱下部のRは最初は大きく、下へ行くに従って小さくしないと立てた時に不自然なRになります。4本揃えられるように定規を作りました。
直角を出し、必要な面全てにカンナを掛け、厚さも揃えたたところで仕上げ寸法線を罫書きます。
まずはバンドソーで曲線部を切り出して行きます。
14枚の切り出しが終わりました。その昔はジグソーで切っていましたが、曲線切りのバンドソーだと桁違いのスピードです。
ベルトサンダーで曲線の中仕上げ。通常は一発で仕上りますが、今回は機械の振動によるチャタリング痕が所々で出てしまいました。
入り組んだ形状の所はさすがに機械では無理なので手仕上です。
一番下の棚板の支柱に沿うR形状の部分ですがこういう所は丸ノミの出番です。
よせば良いのに毎度の事ながら、何故こんな変な形の加工し難い物ばかり考えるんだろう?と嫌になる時があります(爆)
まぁ、ブツブツ言いながら何とか終わりました。だんだん形になって来るとまた楽しいものです。・・・さっきと言う事が・・・
前側にくる板と合わせて見ます。この間には接合用の幅140mmの板を入れ、接合後に両脇の曲面を加工します。
2018/5/24
棚板の接合です。4枚を一気に貼り合わせると手持ちのロングクランプ総動員です。
接着用のボンドが乾く合間に支柱のインシュレーター取付用の座繰り加工をしておきます。
張り合わせ終了です。奥2枚が1、2段目、手前右が3段目、左が4段目です。
ルーターで縁の面取りをしたら、木口付近に見事な焼けが入りました。さすがに硬いです。焼けは繊維方向、つまり画像右から左へ向かって深く入るので、この後の処理が大変です。
加工がほぼ終わりました。支柱は丸のまま使いたいところですが、少しでも幅を抑えるため、内側を削ってあります。
組立てます。噛み合せ部は12か所、ほんの少しのズレがあってもうまく合いません。仮組みの時は気持ち良く合いましたが、本組みしようとしたらうまく行かず、やっとの事で組立てました。
4段目の棚板のインシュレーター取付け部とスペーサーの加工をして全4段の組立て終了です。早く塗装して木を落ち着けたいところですが、、まだ割れやキズの補修、最後のペーパー掛けが残っています。
上で手仕上げしていた4段目の突起部分です。上の棚板とRを合わせるために、あのような加工をしていました。
2018/5/29
低域エンクロージャー台製作
製作中のラックをスピーカーの間に収めてしまうと、低域用エンクロージャーの高さ調整が困難になると思い、最終的な調整をしてみました。チャンデバのレベルと箱の高さを変えながら調整したところ、この辺がベストと思った高さが、箱の高さ調整限界の95mmになり、どの位置からでもボルトが丸見えで、設計時の安全高さ(90mm)を超えてしまい、美観上と安定度に不満を感じたので急遽、台を製作する事にしました。
不安定な訳ではありませんが、見た目が今一つなので、台を造ります。
カリンの床柱から切り出し、二分割にしました。
最初にトリマーとルーター加工します。右がインシュレーター側、左が対面の床面側です。
バンドソーで大まかに切り出して行きます。
形を整え、ペーパーを掛けます。このような形状なので最後は手仕上げです。
ラックと共に塗装します。
設置・調整
インシュレーターが入る部分は二段に落とし込んであるので、箱ごと動かしても外れるような事はありません。以前よりも更に高く調整出来るようになったので、110mmくらいまで高さを調整、試聴して見ましたが、やはり95mmがベストな高さでした。
同じ95mmでも、微妙に音が違います。インシュレーターのみの時はソフトな伸びのある低域、台に載せるとキリッと引き締まった低域です。どちらも悪くありませんが、これが固いカリンなどでは無く、柔らかい材だとまた音も変わるのかも知れません。そう思うと面白いものですね。
塗 装
低域エンクロージャー台の製作で遅れてしまいましたが、やっと塗装までこぎつけました。一回目の塗装後の画像です。窓越しに光が当たると黄金色に発色して綺麗です。今回は刷毛塗りなので、塗膜が厚くなるため、ストップシーラーx1サンディングシーラーx1、仕上げ艶消しx2の合計4回の塗装で仕上りました。
搬入・設置
塗装面積が多いため、10日以上の乾燥期間が必要かなと思いましたが、天気も良く温度も高いので5日間で部屋へ搬入、設置しました。上から2段目(6B4G)と3段目(6C33C-B)に収めるアンプは、RCAとスピーカーケーブルの接続がやり難いので、これまでのように簡単に各ユニットへ接続するアンプを変えて聴くような訳には行かないようです。意外だったのが発熱量が多いはずの6C33C-Bが、ファンで常時空気が動いているためか上段の棚がさほど熱くならないのに、6B4Gの方は上段の棚が結構熱くなります。ケヤキにとってかなり過酷な温度と思われ、割れや反りが出る可能性が高いので、何らかの対策が必要かも知れません。更にその加熱により塗料の匂いが多少なりとも出て少し頭痛がします。F4塗料と言えども、やはりウレタン塗料は完全硬化の10日以上の期間を置いた方が良いようです。
800mm以上ある一番上段へ、33kgの2A3を設置するのはキツいかな?と思いましたが、何の事はありませんでした。設計時はその重量から一番下段へとも考えましたが、大き過ぎて奥行きが必要になり、スピーカー前面よりもラックが前に出てしまいますし、かと言って中段へこのアンプを納めるのはもっと大変だった事でしょう。
ラックの完成重量は48kgになりました。かなりの重さですが、その美しい木目を見ると苦労も報われます。アンプを置いて木目が隠れてしまうのが惜しいです。画像では光の加減で支柱と3段、4段目の棚板の色が違いますが、実際はほとんど差異はありません。アンプ4台を載せた総重量は140kgですが、この構造だと、トン単位の重量にも耐えると自負しています。コントロール部ラックと同様の形状にした結果、棚板の振動はほとんど感じ取れないほど軽微です。
音の変化
音は確実に良い方向へと変わりました。これはスピーカーケーブルが短くなったためなのか、床にアンプを直置きで床からの振動をまともに受けていたのが、ほとんど振動しないラックへ設置した結果なのか、あるいはスピーカー間に140kgもの物体が入ったためなのかも知れませんし、その相乗効果とも考えられます。
理想としていたボーカルの定位、口の大きさと高さ、奥行きを伴った立体感、上の帯域に被らない締りと量感のある低域、これまでで最上と言える音になりました。
あの震災から7年余り、再構築を始めた当初の目標を超える音になったのは間違いありません。長かったか、短かったのか分かりませんが、これで一区切り付きました。2A3の製作から休み無しで突っ走って来たので、少々疲れ気味です。少し休みたいです。もうこれで十分とも思える音ですが・・・これで満足はしません。私の音に対する欲に終わりはありません(爆)
2018/6/10
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仕上予定 W:780 L:850 H:825 推定重量:40〜50kg