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 6B4G  6C33C-B   MOS・FET   2A3   MOS・V‐twin

6B4G 改
6B4Gを改造します。
6B4Gは特に思い入れのあるアンプで、私が最初に手にした真空管アンプでもあり、意匠も音も気に入っていました。震災でだめになった6B4Gを復活第一弾のアンプとして新たに造り上げましたが、昨年の2A3・全段独立電源が非常に好ましい結果になったので、こちらも同一電源で作り直して見たくなりました。

改造と言ってもシャーシからの造り直しになるので、新たに一台造るのと変わりありません。このアンプは解体し、真空管、電源トランス、チョーク、ドライバートランス、出力トランスは外して使用します。

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設計はプリアンプ電源部の再製作が終わった直後から始めて6月くらいには七割方進捗し、部品もほぼ揃っていましたが、夏は木材の加工をしたくないのと(手に付いた汗で数年後にムラが浮き出てくる場合があります)暑さで集中力が落ちるので涼しくなったら再開しようとこれまで休んでいました。最近になって図面を開いたら「どこまでやったっけ?」状態で(笑)、何とか纏まったのがこの図面です。2A3では全体のサイズが大きかったので、今回は出来るだけコンパクトにしようと設計に時間が掛かりました。まず、2A3ではパーツを収めきれずにシャーシの高さを前60mm、後80mmの二段にしましたが、これを配置の工夫、ブロックコンデンサーの小型化で60mmの一段とし、全体のサイズも一回り小さくしています。




回路は基本的に同じですが、2A3はヒーターまで全て安定化電源にしたのを今回は5687を交流点火、6B4Gは簡単な回路で直流点火とし、2A3では省略していたハムバランサーを取付けます。それと2A3は電源立上げ時の突入電流抑止とショックノイズ防止、更にヒーターが温まってからB電源を立上げようと抑止用抵抗をタイマーで解除(30秒)していましたが、これは3秒程度で十分と分かったのでタイマーを使わず、トランジスタで簡単な遅延回路にしてミニチュアリレーで制御する事にしました。これとヒーターの点火を簡素化した事もコンパクト化に貢献しています。

現在の6B4Gは管直上部のラック棚板が熱を持つため、簡易的に棚板後面にファンを取付けて冷却しています。6B4Gより発熱量が高いはずの6C33C-Bは管直下にファンがあるので上段の板がさほど熱くならない事から、このアンプも底板へファンを取付ける事にしました。

ウッドパネルの意匠は大まかに描いて見ましたが、製作可能かどうか分かりません。試しに柔らかい材で試作して見て、可能であればそのまま製作しますが、難しい場合は新たに考えます。



仕上予定 W:541 L:458 H:190 推定重量:32kg前後


2019/10/10
各種部品の取付金具をアルミ平板から切り出して加工しました。シャーシ固定部微調整用の長穴加工、各穴のオフセット、干渉部の逃げなど、こんな物でも加工には一日以上掛かります。アルミは切断、曲げは楽ですが、穴加工とタップには神経を使います。
2019/10/15
今回、フロントパネルの意匠はあまり悩まずに考える事が出来たのですが、後になってよくよく図面を眺めていたら加工方法で頭が混乱してきたので、桧の端材を使って試作して見ました。本性を現して30分ほどで荒加工したやっつけ仕事です(爆)。問題は正面の両端から中央部へかけての、えぐりを入れた曲面加工で、心配した通り二次曲面ならまだしも三次曲面で加工しないと、思い描いていたような綺麗な曲線になりません。NCルーターでもあれば別ですが、ベルトサンダーでサイドパネルとの接合面(平面、直角)と上下の曲線部を意識しながらフリーハンドで勘を頼りに加工すると言う難度の高い作業になります。試作して見たら良い感じなので何とかこれで造りたいとは思いますが、かなり難しいのでもう少し考えて見ます。
取付金具・ヒートシンク加工
ヒートシンクの止穴タップは刃先を加工した三種のタップで三段階に分けて切ります。それでも加工部に厚みが無いので、有効長は3mm程度しか取れません。固定用スタッドも、ここを利用して金具や部品を固定するため、各部で長さが違います。
フロントパネル試作
銅板へ各種のキリ、ホールソー、ノックアウトパンチャーで加工して行きます。
傷が付かないようにビニールテープで養生して角穴の開口です。
スクレイパーとヤスリでバリを取り、加工が終了しました。
真鍮板や鉄板と比べて銅板は柔らかいので加工は比較的楽ですが、傷が付きやすいのが難点です。画像左はセンター穴を開ける時のキリにまとわり付いた切粉が回転して付いた擦り傷ですが、このような傷でも結構磨き込まないと中々消えてくれません。中央の画像は2A3の時と同じくノックアウトパンチャーでの開口が多かったので、圧力で天板が1.0mmほど反っていました。両端の曲げは精度良く90°が出ているので、この反りを修正しないとウッドパネルの寸法が微妙に変わってきます。当て木をしてセットハンマーで叩いて修正しました。
B1、B2、B3の安定化電源をテストし、プレート電圧をB1:290V、B2:257V、B3:82Vになるように調整します。
試験のデータを元に基板へ組込みました。上がB1x2回路、下がB2とB3用です。
基板が組み上がったところで全てのパーツをシャーシに取付けてチェックします。
MOS・FETの放熱器は一段落し込んだ6B4Gソケット取付板に近いため、ぎりぎりまで離隔を取り、何とか5mm程度の空間を確保出来ました。
今回のシャーシは昨年製作した2A3とほとんど同じ内容にも関わらず、横35mm、縦17mm、高さ20mm(後段)小さく出来ましたが、そのお陰でパーツの配置に頭を痛め、かなり窮屈になる所が出てしまいました。特に他のパーツと干渉する部分ではミリ単位で寸法を追い込み、良く収まったなと思う箇所が多数あります。シャーシの方は追加工も無く、全て気持ち良くパーツか収まりましたが、机上で考えた寸法と現物ではイメージが違い、パーツ間にもう少し余裕が欲しい所も出てきたので、スペーサー等で調整しました。
コンデンサーと6B4Gソケット取付板の離隔は2mmです。
ハムバランサーはカレイナットを介して天板を貫通させるので、取付位置と天板穴位置の誤差はゼロにしなければなりません。
ブロックコンデンサーと天板開口穴のギャップは0.3mm。真下からライトを当てるとギャップの調整が楽に出来ます。
基板から底板までは1mmです。全て設計通りに収まりました。
2019/10/27
銅板加工・仮組立
天地が逆ですが、底板へ取付けた冷却ファン周辺の状況です。
ウッドパネルの製作に掛かりたいところですが、仕事が立て込んできたので思うように進められません。11月中には完成させる予定でしたが、年内でも難しい感じです。今日は時間が出来たのでウッドパネル製作に先立ち、以前からの懸念事項であったバンドソーのブレード交換と整備をしました。現在使用しているブレードは良く切れるのですが、カリンを切ると刃が目詰まりを起こすのが難点でした。切れが悪くなり、焼けも入りやすくなります。真鍮ブラシで落してもすぐに同じ状態になり、有機溶剤で落さなければ根本的な解決にはなりません。刃のピッチは8mmですが、考えた末にこれを24mmにしてチップを付けた物を刃物屋さんに特注して作ってもらいました。次に新しいブレードに合わせて各部の調整をしますが、これがなかなか面倒で時間が掛かります。
全ての調整を終え、カリンで試し切りをしてみたところ、三倍のピッチとチップ付きなので切断面はさすがに荒いですが、切断スピードは倍ほども違い、今までに体験した事が無い切れを発揮しました。これまで使用していたブレードでも十分でしたが、これで目詰まりの心配も無く、快適に使えそうです。
2019/11/3
バンドソー整備
ウッドパネル加工
先行してプリ電源部で使いましたが、この時のために購入していたブラジリアンローズウッドを裁断します。
芯持ち材なので芯と割れを避けて製材しましたが、新調したブレードのお陰でスイスイ加工出来ます。順調に荒加工が終了しました。
銅板を載せて確認します。精度良く加工された銅板のお陰で、ウッドパネルの直角を正確に出す事で綺麗に収められました。
今回の難関部、フロントパネルの加工に入ります。上面と前面部を先に加工してからじっくりと腰を据えて、両サイドの加工手順、曲線半径、全長に対しての切削面積バランスなどを検討します。
加工終盤、イメージ通りに仕上がってきました。上下でえぐりの深さが違い、下面も曲線で仕上げています。加工中は上下どちらかしか加工面を見れませんので勘が頼りです。ほんの少しの手先の加減で一瞬にしてパーになってしまいかねません。
加工が終了したので、組付けて状態を確認します。6C33C-Bフロントパネル以来の難しさでしたが、何とか失敗せずに加工終了出来ました。継ぎ目部分に1.5mmの段差がありますが、これもちゃんと意味があります。
銅板の固定桟を取付けようと寸法を確認したら、60mmの注文が59.5mmになっていました。おまけに銅板の厚みは3mmだと思っていたら3.2mmです。この場合、墨線を引く時の基準面によっては合計0.7mmの誤差が出ます。確認は大事ですね。
銅板と底板の固定桟を取付け、ビスで固定しました。残るはサイドパネルの加工です。フロントパネル下部の曲線は設計時には無かったもので、アドリブで付けました。サイドパネル前面の曲面加工と良い具合の連続した曲線が描けるのでは?と考えてフロントパネル側を余分に出したのですが、思い付きだけで何の検討もしていない(浅はかとも言う?)ので、うまく収まってくれれば良いですが・・・(爆)
2019/11/16
フロントパネルの仕上げをします。このような複雑な曲面の処理は最終的に手でないと加工出来ません。#80〜#320までのペーパーを使い、地道に仕上げていきます。
2019/11/17
前面だけ無事に仕上がりました。最後の仕上げ、全ての面にペーパー掛けをします。
接合部で1.5mmフロントパネルを出したのが功を奏して、上下の曲線どちらも綺麗に収まりました。あれが無ければ下部の曲線が接合部で急角度になり、処理に苦労していたと思います。
全ての加工が終了しました。フロントパネルは良く失敗せず一発で仕上がったなと思いますが、試作して見て削る角度、切削材を動かす方向、力加減などが参考になったのが大きかったです。
塗 装
塗装一回目、ストップシーラーを吹いたらフロントパネル上面部分に割れが浮き出てきました。この割れと節は製材時には無かった物で、削り出して行くうちに出て来た物です。拡大画像なので不明瞭なのと撮影角度で分かり難いですが、割れがはっきりと確認出来ます。隙間が極細なのでパテで埋められるものでは無く、深さが浅ければ塗装を重ねるうちに埋まるのですが結構深さもあります。割れの部分へ塗料を浸透→乾燥→ペーパー掛け→全体塗装を三回繰り返して割れを埋めました。
塗装の合間に銅板を仕上げます。まずは傷消しのペーパー掛けです。
プリ電源部で使用した銅色塗装は良い感じでしたが、保護塗装をしたら質感が下がってしまいました。やはり本物には敵わないと思い銅板を使用しましたが、下処理は遥かに大変です。いぶし塗装をする際には1.5mmのガンノズルから何とか塗料を噴き出せるまで粘度を上げ、表面を少し荒くして見ました。
七回目で満足の行く塗膜になりました。塗装終了です。気温が低くなってきたので4〜5日は養生期間が必要でしょう。塗料、工具、機械類を片付け、ゆっくりと乾燥を待ちます。
2019/11/23
組立 配線
仕事の絡みもあって思うように進められませんでしたが、時間が出来た時に組立て、配線をしていきます。今回は粗目のいぶし塗装にしたせいか、太陽光が当たるとより赤銅色が際立ち、塗膜頂点付近に綺麗な赤色が粒になって無数に現れます。底板へ取付けた冷却ファンは本体と接続するカプラーを金具で固定し、取り外しが楽に出来るようにしました。
左:電源部 中央:増幅部の配線です。この辺はどうと言う事はありませんが、右画像の突入電流抑止・ファン電源基板とB2/B3用SBD廻りはシャーシのコンパクト化の煽りを受けた場所で、部品の取付け、配線順序を間違うとハンダごてすら入らないほど窮屈になってしまいました。
2019/12/22 完  成
測定
周波数特性が1KHz付近から盛り上がっています。このグラフを見た時は???状態でした。球の個体差もあるので前段の5687をNEC(グラフ:上)から東芝(グラフ:下)へ交換したら1.5dBほど下がりましたが、このような特性は初めてです。聞いたり調べたりして分かった事は @トランス(橋本)の特性と磁化の影響 Aデカップリングコンデンサーの取付位置と配線の引き回しくらいの事しか分からず、@は補正回路を追加し、Aについてはデカップリングコンデンサーを外して試しましたが、全く変化は見られません。回路、配線方法も2A3とほとんど変わりありませんし、球は前段三種類、出力管三種類で組み合わせを変えても変化無しです。
矩形波観測ではオーバーシュートが出ていましたが、位相補正回路のコンデンサー:820pFを倍の容量にしたところ落ち着きました。

最大出力はほぼ定格通りの4.5W 残留雑音は前段の交流点火と出力段の簡易直流点火で2A3より多少は悪くなるかと考えていましたが、R:0.3mV L:0.2mVとほとんど差はありませんでした。

試聴
トランス類と球は前6B4Gからの流用なので必要ありませんが、他のパーツのエージングが必要です。数時間程度のエージングで音を出して見たところ、最初は高域の荒さが目立ちますが、2〜3時間でかなり聴きやすい音に変わります。
全体的には2A3と同様の音です。やはり電源を強化し、全段独立電源とした功績は大きいと感じます。定位、立体感、奥行感は他のアンプと一線を画します。気になる周波数特性の盛り上がりは、超フラットなMOS・V‐twinと聴き比べて見ましたが、聴感上の高域の差や癖は感じられませんでした。



完成概要 W:541 L:458 H:190 重量:32kg

完成しました。今回は設計から完成まで中断が何度もあったので、製作期間がかなり長く感じました。フロントパネルは下部のえぐりを深く取ったため、前面の曲線が強調されてボリューム感満点です。
2019/12/25
小 改 造
このアンプは改造前の6B4G完成後間もなく稀にヒューズが飛んだり、「ザッ」と一瞬ノイズが入ったりしていたのですが、球かソケットの接触不良のせいだろうと思っていました。しかし改造後も相変わらず出ており、しかも最近はその頻度が高くなってきたので原因を探ったところハムバランサーの不良でした。ハムバランサーに使用しているRA30Y 30Ωは改造時に新品を探しても見つける事ができず、あったとしても49週待ちとかとんでもない時間が必要だったので旧アンプから取外して使用した物ですが、初期不良だったようです。ハムバランサーは完全に雑音を消せる訳ではありませんし、2A3は固定抵抗でやりましたが何ら不具合はありませんのでこちらも固定抵抗へ変更する事にしました。改造前(画像左)と改造後(画像右)です。RA30Yは取り外さずこのまま取付けておきます。
測定と試聴
改造直前の測定はしていませんでしたが、周波数特性が変わりました。1KHzあたりから1.5〜3dBほど盛り上がっていた特性がだいぶ平坦になり、7KHzあたりから40KHzにかけて−1.6dBほどです。完成直後の特性は未だに不可解ですが、納得できるカーブになりました。
音の方は聴いて分かるような変化はありませんでした。強いて言えば少し角が取れたかな?とも感じましたが気のせいかも知れません(笑)

2021/11/3